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『トンボの眼』バックナンバー

No.16 2009年7・8・9月号
盆踊りへ出かけよう

西田昌代  全日本郷土芸能協会

 お盆の季節です。正式には「盂蘭盆(うらぼん)」という仏事で、東京地方は7月中旬、関西その他は8月中旬に行います。期間中には、迎え火を焚いたり、キュウリの馬やナスの牛を作ったり、お墓参りに行ったり…「盆踊り」をする地域もあります。

西馬音内の盆踊

 お盆の芸能である「盆踊り」を知らない日本人はいないでしょう。最も私たちの身近にある民俗芸能ともいえます。ポピュラーなのは、広場の中心にすえた櫓の周りを円になって踊るものでしょうか。スピーカーから流れる音楽と太鼓の音に合わせ、決められた振り付けを踊るスタイルです。お祭り要素が強い現代的なものですが、関東にはこの種の盆踊りがよく見られます。

 しかし、地方にはもっと特色のある盆踊りも存在します。先祖を敬い、偲ぶ気持ちは同じですが、地方や宗派よってその儀礼や風習が異なり、地域性や独自性、精神性が現れるからです。

 例えば東北。秋田県にある「西馬音内(にしもない)の盆踊」では、顔をすっぽりと黒い頭巾(ひこさ頭巾)や網笠で覆い踊るものがあります。頭巾をかぶった踊り手は死者を表わしているとされ、別名「亡者(もうじゃ)踊り」と呼ばれるゆえんにもなっています。

白鳥の拝殿踊

 また、中部の岐阜県白鳥町「白鳥(しろとり)おどり」も有名です。白鳥神社での拝殿踊は、板張りの拝殿にキリコ灯篭を吊るし、その下で踊ります。お囃子はなく、踊り手の歌と床板に打ち付ける下駄の音だけで心を合わせ踊ります。

 南に下って岡山県白石島の「白石踊(しらいしおどり)」もまた、特徴ある盆踊りです。めずらしいのは、一つの音頭に合わせ、数種類の踊りを同時に踊る点です。源平合戦の戦死者を慰めるために始まったといわれ、ひとつの太鼓と音頭取りを中心に輪となって踊ります。浜辺の踊り場では、音頭取りが立てる傘上に海より帰ったご先祖が宿る―そんなふうに言われています。

白石踊

 集い踊る場がある一方、初盆の家の庭先でも踊られます。その折には、家族や親戚、近所の人など親しい間柄だけで行うそうです。現代的な「盆踊り」が広がって行く中、これら本来の意味合いを持つ「盆踊り」…祖霊を慰め、交信の場となる地域も数多く残っています。

 機会がありましたら、是非皆様も各地の盆踊り会場へとお出かけください。「盆踊り」は、数多ある民俗芸能の中でも、参加しやすいものです。誰もが経験したことがある故、比較しやすいとも言えるでしょう。その違いを楽しみ、近すぎて気付かなかった魅力を「体感」して頂ければ、と思います。