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地域再生・地域振興

『5万年刻む「砂時計」福井の水月湖70メートルの堆積物』

 数万年前の事象の年代を決める「時計」として、今は放射性炭素(C14)による測定法が最も活用されている。安定した質量数12の炭素に対して、大気中に微量存在するC14は半減期約5730年で、死滅して大気と炭素の交換が止まった生物の内部に取り込まれたC14の濃度を調べれば年代が分かる仕組みだ。しかし、これにも問題があり、年代ごとのC14の濃度を正確に突き止め補正する必要があるといわれている。それを福井県にある水月湖の堆積物に含まれる放射性炭素量と照合すれば、誤差は5万年でプラスマイナス169年しかなく過去5万年まではほぼ正確にさかのぼることができるという。

 湖底に差し込まれた筒状パイプを引き揚げた際に出来た土の断面は黒や白、中間色などの層がきめ細かく並ぶ。この縞模様を形成する年縞(ねんこう)堆積物は、数万年前から四季ごとに湖底へと沈み込んだ黄砂やプランクトンの死骸、土などだ。1年に積み重なる厚みは最小0.3ミリ以下、平均でも0.8ミリ。そんな薄い層がきれいに残るのは、(1)山に囲まれた地形で大量の土砂などが流れ込む水害などがなかった(2)すり鉢状の湖の形のおかげで風波も起きにくかった(3)塩分を含む水が湖底付近に沈んだまま酸欠状態を保ち、プランクトンなどが湖底をかき乱すことがなかったため―といわれる。

 世界でも類をみない、数万年分が連続したしま模様について、薄皮をはぐように分析すれば、気候史などの正確な情報が得られる。そんな分析成果の一つが「時計」の目盛りとしての役割だ。水月湖のような年縞堆積物の化石を調べれば、年代と炭素濃度の関係も明確になる。中川毅・英ニューカッスル大学教授(古気候学)ら日英独などの研究チームは、顕微鏡やX線スキャナーで水月湖の5万2800年分の年縞を数え、植物の葉などの化石のC14濃度を測定した結果、年代とC14濃度の関係の正確さを増した。

 「誤差は1日あたりでわずかプラスマイナス5分弱。考古学年代を測る時計としてはかなり正確な目盛りになった」と中川教授は言う。

 昨夏開かれたIntCal(イントカル)の国際会議では、水月湖のデータが年代測定に組み込まれることが合意された。20年来の日本の研究が結実したといえる。

(1月7日付朝日新聞科学欄)

 科学欄など滅多に読まないのだが、見出しに惹かれて読んだのが上記の記事だ。ニュースとしてはいささか遅れたものではあるが(「水月湖堆積物が年代測れる基準に5万年前まで世界の化石測定可能」福井新聞2012年10月19日付などがある)、当方にとっては初見ではあった。考古学的興味だけでなく、場所が原子力発電が取りざたされている若狭にあって、このような環境が保持されて来た結果に驚きすら感じた。そこでインターネットで調べてみたところ、驚くことに水月湖を含む三方五湖がラムサール条約に基づく登録湿地であることも知った。ここで環境保護と原発は共立するか、などとことさら原発問題を取り上げようとは思わないが、新年を迎えて今だに復興に取り組もうとする東北の人々の姿や復旧の遅れなどをテレビなどを通して見ていると、原発は不要と思わざるをえない。

三方五湖地図

参考
 三方五湖

 若狭湾国定公園の名勝地として名高い三方五湖(久々子湖、日向湖、菅湖、水月湖及び三方湖の総称)は、はす川沿いにのびる三方断層と、北川沿いの熊川断層にはさまれた三遠三角地といわれる地域にあります。このあたりは、リアス式海岸で有名な若狭湾の中でも特に沈降の著しいところです。

 五湖の水は、それぞれ含まれる塩分の濃度が異なり、それに応じて海水魚から淡水魚まで様々な魚類が生息しています。特に三方湖は、ハスとイチモンジタナゴの日本海側における唯一の自然分布域となっています。琵琶湖の魚類相と関連がうかがえることから、生物地理学的に興味深いものですが、最近の調査では確認できず、両種とも絶滅が危惧されています。

三方五湖

 また、鳥獣保護区にも指定されている五湖の水域とその周辺は、動物達にとっても楽園となっています。冬には、1万羽近くの水鳥が越冬し、それらを補食するオオワシやオジロワシの姿も例年見られます。

 このように、水鳥の重要な生息地であり、また、希少な生物の生息地となっている三方五湖は、平成17年11月8日に国際的に重要な湿地として、ラムサール条約に基づく登録湿地となりました。

福井県自然保護センターHPより